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父がそこに居ることが当たり前ではない事に。

父宛の手紙が届く事が当たり前ではない事に。

父の湯飲み茶わんがある事が当たり前ではない事に、私はなぜ気付けなかったんだろう。

突然の父の死

今でも桜を見ると思い出します。

あの日は小雨が降る少し肌寒い日でした。
その年はまだ3月だというのに桜が咲き誇り、とても静かな日でした。

そんな桜の綺麗な日に父は天国へと旅立ちました。
突然、何も言わず。

もっと話たい事や聞きたい事があった、一緒に行きたい所や見たい物がたくさんありました。
でも「いつか話そう。」「いつか聞こう。」「いつか行こう。」「いつか見よう。」

「いつか」なんて絶対に来るという保証はないのに、私は「いつか」が絶対に来る事を疑いませんでした。

「人は失って初めてその人や物の大切さが分かる。」とよく聞きますが本当にその通りでした。

 

残される者の辛さ

私はなぜ気付けなかったんだろう・・・。

父がいる事が当たり前ではなく、父宛の手紙が届く事が当たり前ではなく、父の湯飲み茶わんが食卓のテーブルの上に並んでいる事が当たり前ではない事に・・・私はなぜ気付けなかったのだろう。

天国へ旅立った父を、私は少しだけ憎みました。
母や小さい弟、私を置いて行った事が許せなかったのです。

「絶対に、残して旅立つ人より、残された人の方が辛い。」私はそう思いました。

あれから何年も経ち、私は結婚して子供を産みました。

 

子どもを産んで初めて気づいた父の無念

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子供を産んで、自分の命よりも大切な存在を初めて知りました。

「この子はどんな子になるんだろう?」
「この子はどんな職業に就くんだろう?」
「この子はどんな人と結婚するんだろう?」

この子の未来の事を考えたらとても楽しみでワクワクして温かい気持ちになりました。

その時ふと・・・「父は私がどんな子になるか見たかったのかな?」「父は私がどんな職業に就いたか見たかったのかな?」「父は私がどんな人と結婚したか見たかったのかな?」

そんな事を思いました。

あの時、幼かった私と弟を置いて先に天国へと旅立たなければならなかった父はどんなに辛かっただろう?

きっと・・・「私達と一緒に生きたかった。」そう思いました。

 

最後に

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今でも桜を見ると父の事を思い出します。

お父さん、この世の中に「当たり前」な事なんてないんですね。
生きている事も全部全部。

いつかまたお父さんに会えた時に、たくさん褒めてほしいから私は頑張ります。